ナノ合金生成

 

MC2化合物を加熱することで金属ナノ粒子が得られるわけですが, では原料として金属塩の混合物を用いた場合はどうなるでしょうか? MC2を作るときに,あらかじめMCl2とM'Cl2 を混ぜておけば,MxM'1-xC2ができるはずですから, これを加熱すれば

と,混ぜた金属原子(図中赤い原子)も同じ炭素のケージに閉じ込められ, 自動的に合金化するはずです. というわけでやってみたのはFe-Co,Co-Eu,Ni-Pd,Fe-Pt,Fe-Nd,Co-Smの組み合わせ. まずこれらの金属は二種類のグループに分けられます. Fe,Co,Ni,Pd,Pt,EuはMC2型の化合物を作る金属. 一方のNd,Smはそのような組成のものを作らない金属になります. また,組み合わせとしてはFe-CoとCo-EuはまあMC2も作るし簡単に合金化しそうな まず間違いなく反応の行くもの,Ni-Pdは水素関連で触媒にでもならんかなあということと, もしNiがきちんと分散していれば常磁性に,Niがミクロには集まっていれば強磁性になるので, ちゃんと合金化しているかが判定しやすい組み合わせ,後半の三種類は強い磁性体として知られている 組み合わせを試しています.

実際に合金化させると,MC2化合物を作る金属のみからなる組み合わせでは いずれもそれなりに自由な組成比で合金化していることが確認されました. また,Ni-Pd系では磁性は常時性的であり,Ni原子がPd原子によってかなり希釈されていることがわかりました. 問題はSm,Ndを入れた系で,どちらもほんの数%程度しか粒子中に含まれていません. これは図に示した機構から考えれば当たり前な話で,MC2化合物を作らない 以上,最初のMC2化合物の欠陥に取り込まれていたもの(下図中央)か, 後から粒子外部に付着したもの(下図底部)しか合金化しないわけです.

また,Fe-Ptに関しては球状のナノ粒子ではなく,比較的不定形なナノ粒子となることから, 他のものと多少機構が違うのかもしれません. (他のものは全て球状の炭素被覆ナノ合金となります)

これらの結果から考えるに,おそらくFe,Ni,Co,Pd,Euの任意組成の炭素被覆ナノ粒子は 容易に作れるものと思われます. また,Zn,Cuを混ぜたものも恐らく可能で,Ptも可能性があります.

ただ問題は,これら合金を作って何に使うか,なんですよねえ・・・.