この元素サンプルはヘリウムの単体であるヘリウムガス(He)がをガラスに封入したものです.ヘリウムは1895年にラムゼーにより初めて単離されましたが,その存在自体は太陽光の分光から予想されていました.Heliumの名は,この元素の存在が太陽光のスペクトル中に発見されたことから,太陽神Heliosにちなんで命名されました.
この元素サンプルはヘリウムの単体であるヘリウムガス(He)がをガラスに封入したものです.ヘリウムは1895年にラムゼーにより初めて単離されましたが,その存在自体は太陽光の分光から予想されていました.Heliumの名は,この元素の存在が太陽光のスペクトル中に発見されたことから,太陽神Heliosにちなんで命名されました.
原子番号2,ヘリウム原子は,水素とともにビッグバンの時から宇宙に存在する元素です.自然界のヘリウムには中性子数が2の4Heと中性子数が1の3Heが存在しますが,存在比率としては4Heの方が圧倒的に多くなっています.
ヘリウムは宇宙ではありふれた元素ですが,貴ガス元素のひとつであるため化合物をほとんど作らず,さらには軽い気体であることから地球上からはほとんどが飛び去ってしまっています.では現在手に入るヘリウムがどこから来たのかというと,地下深くでさまざまな放射性元素が崩壊した際に放出されるα線(=4Heの原子核)が,長い歴史の間に少しずつガスを通さない粘土層の下に蓄えられたものが掘り出されて利用されています.現在採掘されているヘリウムは,おもに天然ガスの副産物として限られたガス田でのみ回収されており,ここ数十年価格が上がり続けている貴重な元素です.
ヘリウムは非常に小さく軽い原子なので,小さな隙間が存在するとそこから逃げていきます.このため真空装置などのリーク(漏れ)の検出に使われたりしています.また,沸点が非常に低い(沸点4.2 K=−269 ℃)物質であることから,低温を保つ必要のある超伝導磁石など冷却剤としても多用されており,医療で使われるMRI,化学で用いられるNMR,物理の各種実験で使われる超伝導マグネットや低温測定装置などにも必要不可欠です.
ヘリウムは高温・高圧条件下で比較的核融合反応を起こしやすく,現在研究が進められている核融合における燃料としての利用も期待されています.特に,太陽から吹き出し長い年月の間に月面に蓄積されている3Heは核融合をかなり起こしやすく,はるか未来には重要なエネルギー源となるかもしれません(まだまだだいぶ先の話ではありますが……)