この元素サンプルは,リチウムの単体である金属リチウムをガラスに封入したものです.リチウムは1817年に元素の存在がアルフェドソンにより確認され,1821年に電解により初めて単離されました.Lithiumの名称は,この元素が岩石中に見つかったこと(そして当初は,岩石内にしかないと考えられたこと)から石を意味するlithosに由来.
この元素サンプルは,リチウムの単体である金属リチウムをガラスに封入したものです.リチウムは1817年に元素の存在がアルフェドソンにより確認され,1821年に電解により初めて単離されました.Lithiumの名称は,この元素が岩石中に見つかったこと(そして当初は,岩石内にしかないと考えられたこと)から石を意味するlithosに由来.
原子番号3のリチウムはアルカリ金属の一種であり,その単体ははさみなどでも切れるような柔らかい金属です.アルカリ金属のなかでは比較的安定性は高いほうではありますが,それでも酸素や水と反応し,また他のアルカリ金属とは異なり気体の窒素とも反応していくため,単体の金属リチウムを密閉せずに保管することはできません.
リチウムはかつてはそれほど用途の多い金属というわけではありませんでしたが,リチウムイオン電池の開発以降はその重要性が一気に増した元素です.リチウムの原子自体は地球上での存在量は比較的多いため希少というわけではありませんが,海水中などに薄く広く散らばっているため回収にコストがかかります.そのため,(存在量自体は多いものの)希少金属の一つとみなされています.
変わった用途としては,炭酸リチウムが躁うつ病の治療薬として知られています.その作用機構はまだよくわからないところが多いものの,リチウムイオンが一部の酵素を変質させその作用を抑えるためではないか,とも言われています.
また,化学の分野では,ブチルリチウムやリチウムジイソプロピルアミド(通常LDA)などの有機リチウム化合物が,有機化合物からの水素の引き抜きなどを行える非常に強力な塩基として知られており,有機化学の分野では欠かせない物質となっています.
資源としてのリチウムは,塩湖などの濃縮された「塩水」からの抽出(チリなどの南米が多い)や,リチウムを含む鉱石からの精製(オーストラリアなど)等によって得られていますが,海水からの抽出も日本など多くの国で研究されています.コスト面がネックで現状では採算が合わないものの,吸着剤の改良などがうまくいけば,ほぼ無尽蔵にある海水中のリチウムが利用できるようになるかもしれません.