この元素サンプルは,炭素の単体であるグラファイトを主成分とする石炭です.炭素の単体であるグラファイトやダイヤモンドは,古くから知られています.炭がCarboと呼ばれていたため,この元素はCarbonとなっている.
この元素サンプルは,炭素の単体であるグラファイトを主成分とする石炭です.炭素の単体であるグラファイトやダイヤモンドは,古くから知られています.炭がCarboと呼ばれていたため,この元素はCarbonとなっている.
炭素は非常に身近な元素であり,生物の体を形作る各種有機化合物の主鎖ともなっている重要な元素です.その単体はグラファイト(いわゆる「炭」の主成分)やその一層を剥がした構造のグラフェン,宝石の代表格であるダイヤモンド,ナノ材料であるフラーレンやカーボンナノチューブなどが有名ですが,それ以外にも様々な構造のものが知られています.
炭素原子は4本の結合を作りやすく,これを使ってどこまでも繋がった分子を作ることが可能です.さらにπ結合を使った二重結合や三重結合なども比較的安定なため,非常に多彩な構造の分子が実現できます(※例えばCASという化学のデータベースには2023年時点で2億8千万種類以上の分子が掲載されており,毎日数万ほどが新規に追加されています).この「多彩な化合物を作れる」という特徴が,生物のような複雑なシステムを作るうえで非常に役に立っており,また人間がさまざまな性質を持つ物質を合成できる理由にもなっています.
炭素の単体であるグラファイトは電気をよく流す金属(半金属)であり,ゆるく積層した層状構造をとっているためその層間にさまざまなものを挿入することが可能です.例えばリチウムイオン電池はその開発時から長らく負極材としてグラファイトを利用しており,リチウムイオンが層間に入ったり出たりすることで充放電を行っています.異性体にはダイヤモンドがあり,量産できる物質としては最も硬い物質として知られています.このためダイヤモンドはさまざまな工具や実験機器に利用されています.また,大きなバンドギャップと電子易動度により半導体としてもすぐれた特徴を実現できることから,ダイヤモンド半導体の実用化に向けた研究も注目されています(難しい点も多いのですが……).
身近なところでは,グラファイトを酸素などで焼きだして削り,大小さまざまな穴をあけた物質である活性炭があり,分子レベルの穴にさまざまなものを吸着できることから有害物質などの吸着剤として古くから利用されてきました.
研究関連では,グラファイトの原子1層を剥がした構造を持つグラフェンが,究極に薄い膜材料(※なにせ原子1個分の厚みしかない)としてさまざまに用いられています.グラフェンは比較的欠陥の少なく面積の大きい膜が作りやすいことから,原子レベルに薄くガスを透過しない膜としての利用が行われたり,擬2次元物質として非常に変わった電子物性を示すことから物性物理の研究対象としても興味深い物質です.