この元素サンプルは,酸素の単体である酸素ガス(O2)をガラスに封入したものです.空気中に「ものが燃えるのを助ける成分があるのではないか?」ということはかなり古くから言われていましたが,プリーストリーによる単離が初めて報告されたのはされたのは1775の事です(1771年にはすでにシェーレが発見していたが,出版に時間がかかり発表が遅れた).Oxygenの名は,酸性(oxys)を生じる(gen)から.
この元素サンプルは,酸素の単体である酸素ガス(O2)をガラスに封入したものです.空気中に「ものが燃えるのを助ける成分があるのではないか?」ということはかなり古くから言われていましたが,プリーストリーによる単離が初めて報告されたのはされたのは1775の事です(1771年にはすでにシェーレが発見していたが,出版に時間がかかり発表が遅れた).Oxygenの名は,酸性(oxys)を生じる(gen)から.
「酸素」,つまり酸を形成する元素,という名前は,酸素原子が古くから知られていたさまざまな酸を構成する元素だということに由来します.例えば硝酸,硫酸,酢酸,リン酸など,いろいろな元素の酸化物が酸として知られています.排ガス規制の緩かった時代には,エンジン内の燃焼で生じた窒素酸化物が大気中で硝酸や亜硝酸となり,酸性度の高い雨が降る酸性雨を引き起こしました(※現在では排ガスを十分に触媒で分解しているため,排ガス中の窒素酸化物の量はかなり減少しています).
酸素はO2として大気中のおよそ21%を占める元素で,ご存じの通り呼吸に必要不可欠な気体です.しかしこのO2という分子,反応性の高い気体であるため,単体で多量に存在している状況は異常と言うことができます.本来であれば迅速に何かと結合して燃えてしまう酸素がこれだけ多量に存在しているのは,植物が光合成によりせっせと安定な二酸化炭素から不安定な酸素を生産しているためであり,逆に言えば生物の存在しない環境では酸素が単体で多量に存在するということはほぼありません(※これをもとに,地球外惑星の大気中に多量の酸素が見つかれば,生物が存在している間接的な証拠になる,という考えもある).
酸素原子は負イオンとなりやすく,さまざまな元素,特に金属元素と結合し酸化物を形成します.土壌の主成分はSiやAl,MgやCaなどの酸化物であり,酸素は地球の表面付近では最も存在量の多い元素です.ガラスや陶器など酸化物は我々の身の回りでも実にさまざまなところで利用されています,
あまり知られていないことですが,酸素分子O2は不対電子(※通常電子は2個でペアを作ることが多いが,そのようなペアになっていない電子の事を不対電子と呼ぶ)を2つもち,弱いながらも磁性を示すことが知られています.このため,液体酸素をネオジム磁石のような強力な磁石に振りかけると,一部が磁石に吸い付く様子が確認できます.ただ,液体酸素はいってみれば「高濃度に濃縮された酸素」ですのでものを燃やす力が強く,有機物などは激しく炎を上げて燃えることもあるため取り扱いには注意が必要です.