原子番号11 ナトリウム

この元素サンプルは,ナトリウムの単体である金属ナトリウムをガラスに封入したものです.ナトリウムは参加しやすい金属のため,このサンプルの表面もそこそこ酸化しています.日本語やラテン語のナトリウムという名は,古くから使われていた炭酸ナトリウム(Natron)に由来します.英語ではSodiumですが,こちらは中世の頭痛薬を意味するラテン語Sodanumに由来すると言われています.

Element Cube_ナトリウム

ナトリウムはアルカリ金属の一種です.最外殻の3s軌道に入っている電子への引力が非常に弱いため,この電子が外れやすく,自然界では+1価のイオンとしてのみ存在しています.電解還元によりナトリウムの単体(金属ナトリウム)を作成できますが,水や酸素と非常に反応しやすいため,金属ナトリウムは鉱物油に沈めて水や酸素が入らないようにして保管されています.金属ナトリウムは非常にやわらかい物質で,はさみやカッターで簡単に切ることができます.

金属ナトリウムは,水と反応することを利用して有機溶媒の脱水などにも良く用いられます.また融点が100 ℃以下程度と比較的低いため,高温になる炉から熱を取り去るための熱媒体としての利用が検討されることもあります.例えば日本でも高速増殖炉の「もんじゅ」でナトリウムを用いた冷却が採用されましたが,しばしば配管からのナトリウム漏れと漏れたナトリウムの酸素等との反応による火災を引き起こすなど,その利用は簡単ではありません.

元素としてのナトリウムは,ナトリウムイオンの形で海水中にほぼ無尽蔵に存在するため,安価で使い勝手の良い陽イオンとしてよく用いられています.身近なところでは,食塩(NaCl),重曹(NaHCO3),肥料や火薬の原料にもなるの硝酸ナトリウム(NaNO3),歯磨き粉に含まれるフッ化ナトリウム(NaF)など,さまざまなものに含まれています.ナトリウムは炎色反応も示し,炎の中で非常に明るい黄色い光を放ちます.鍋がふきこぼれた際にコンロの炎が黄色がかって見えるのはこのためです.ナトリウムの発光は,昭和頃のトンネルの照明としても良く用いられていました.

変わった用途としては,日本ガイシが製造しているNAS電池があります.これは金属ナトリウムと硫黄の形で電力を蓄える電池で,使用時にはナトリウムや硫黄を加熱して溶かす必要があるため小型化はできないものの,安価に大電力を蓄えておくことができるため工場全体のバックアップ電源などとして活用されています.

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