原子番号12 マグネシウム

この元素サンプルは,マグネシウムの単体である金属マグネシウムです.ギリシャのマグネシア(Magnesia)という地域で取れる白い(Alba)石として知られていたMagnesia alba(塩基性炭酸マグネシウム)から単離されたため,この名がつきました.マグネシアはほかにマグネシアの黒い石(Magnesia Nigra)と呼ばれた鉱物がマンガンの語源に,磁鉄鉱(Magnetite)が磁石を表すMagnetの語源となっています.

Element Cube_マグネシウム

マグネシウムは原子番号が小さいことからわかる通りかなり軽い元素であり,大気中で比較的安定な金属のなかではだいぶ軽いものとなります.単体のマグネシウムはイオン化傾向が大きく酸化されやすいため,大気中で徐々に酸化され,また一度火が付くと激しく燃焼し危険です.このため金属マグネシウムを単体で使用するのではなく,さまざまな金属との合金とすることで軽量な金属材料として利用することがよく行われています.

軽量であるため工業的にも良く使われる金属であるマグネシウムですが,非常に酸化されやすい=他の物質から酸素を奪いやすい金属であり,一度火が付くと例えば水や二酸化炭素からでさえ酸素原子を奪って燃焼します.このためマグネシウム火災においては二酸化炭素系の消火器や水を使うことができず,もし使ってしまうとより一層マグネシウムが激しく燃焼し危険です.前述の通りマグネシウムやその合金は工業的にも良く使われていますので,その切削屑などからの発火も無視できない頻度で発生しています.発火の際には消火に何が使えるのかをきちんと考慮する必要があります.

マグネシウムイオンは,にがりの主成分(MgCl2)としても知られています.豆乳を凝固させて豆腐を作る際ににがりを入れますが,このときマグネシウムイオンが複数のタンパク質と結合し架橋することで凝固させています.また各種セラミックなどへの添加物など,その安さもあっていろいろな部分で活用されている元素です.

化学の世界では,グリニャール試薬というものとして有機化学で多用されています.ハロゲン化アルキル(R-X)をマグネシウムを反応させるとR-Mg-Xと結合の間にマグネシウムが割り込んだ構造の試薬(グリニャール試薬)が得られます.この時マグネシウムに結合している炭素は非常に負に帯電した状態にあり,他の分子の正に寄っている炭素原子を持つ分子と反応せることで炭素-炭素結合を構築できます.

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