この元素サンプルは,アルミニウムの単体である金属アルミニウムです.アルミニウムの単体は1825年にエルステッドによって成し遂げられました.アルミニウムという名は,古くから知られるアルミニウムイオンの塩であるミョウバン(alumen)に由来します.
この元素サンプルは,アルミニウムの単体である金属アルミニウムです.アルミニウムの単体は1825年にエルステッドによって成し遂げられました.アルミニウムという名は,古くから知られるアルミニウムイオンの塩であるミョウバン(alumen)に由来します.
アルミニウムは地殻中で3番目に多い元素ではありますが,そのイオン化傾向の大きさから単離には時間を要しました.エルステッドは,アルミよりもイオン化傾向の大きいカリウムの単体(※金属カリウムは,当時すでに電解精錬による製法が確立していた)を用いてアルミを還元するという方法で金属アルミニウムを得ることに成功しました.酸化アルミニウムなどを直接溶融塩電解により還元できれば話は早かったのですが,酸化アルミニウムの融点がおよそ2000 ℃とかなり高いことから,金属カリウムを使う間接的な方法がとられています.現在では,酸化アルミニウムに氷晶石(Na3AlF6)を加えることで融点を1000 ℃程度にまで下げることで,電解による直接的な還元が実現しています.ただ,それでも1000 ℃まで加熱したり還元するのにかなりの電力を要するため,金属アルミニウムは「電気の缶詰」などと呼ばれることもあります.
アルミニウムは本来かなりイオン化しやすい金属なのですが,空気中ではその表面が酸化され稠密な酸化アルミニウムが形成され内部に酸素を通さなくなることから,大気中でも安定な金属として利用できます.またそこそこ電気をよく流しつつ非常に軽いので,重量当たりの導電性で考えると非常に高い性能を示します.このため長大な距離をつなぐ必要のある高圧電線などにはアルミニウムが使用されています.
マグネシウムイオンは,にがりの主成分(MgCl2)としても知られています.豆乳を凝固させて豆腐を作る際ににがりを入れますが,このときマグネシウムイオンが複数のタンパク質と結合し架橋することで凝固させています.また各種セラミックなどへの添加物など,その安さもあっていろいろな部分で活用されている元素です.
アルミニウムの軽さは,航空機などある程度の強度と同時に軽量性が求められる用途に適しています.アルミニウムそのものの強度はそんなに高くないのですが,ジュラルミン等の合金としたり適切な熱処理を組み合わせたりすることで高い強度を実現できます.これにより,現在では航空機や鉄道車両,エンジンのシリンダーなどとしてもアルミは多用されています.身近なところでも,アルミ缶や1円玉,アルミ鍋やさまざまなインテリアなど,アルミニウムはさまざまなところで見かけることでしょう.
変わった用途としては,アルミニウムの酸化しやすさを利用したテルミット反応があります.酸化鉄などとアルミを粉末にして混合し点火すると,アルミが酸化物から酸素を奪って急激に燃焼し,2000〜3000 ℃の高温を得ることができ,これを利用した溶断や溶接が行われています.
アルミニウムの酸化物が結晶状となったものはサファイヤとして知られ(※不純物としてクロムを含むと赤くなりルビーと呼ばれる),非常に硬い物質となります.サファイヤやルビーは宝石にしては珍しく,最安定状態の構造です.このため単に高温で加熱して冷やすだけで,これらの物質の巨大な結晶を作成することができます.サファイヤはその硬さを活かしでさまざまな軸受に使われたり,光透過性の高さを活かして光学的な窓材となったりしています.またルビーは,世界初のレーザーであるルビーレーザーの発振部としても用いられました.