原子番号14 ケイ素

この元素サンプルは,ケイ素の単体であるシリコンインゴットに集積回路を構築したものの断片になります(不良品のシリコンウェハ―を切断したもの).Siliconという名前は,火打石(silex)をもとにラヴォアジェによって名付けられた.当時は火打石の主成分であるSiO2が元素だと思われていましたが,その後1824年ごろにベルセリウスによってケイ素が単離されました.

Element Cube_ケイ素

ケイ素は地殻中で酸素に続き2番目に多い元素で,さまざまな石の主成分として含まれています.また身近なところではガラスが二酸化ケイ素を主成分としています.ケイ素は酸素と非常に強く結合するため,酸化物を還元して単体とするのは容易なことではありません.

ケイ素は,おそらく人類が最も高純度に精製した元素でしょう.単体のケイ素は半導体であり,現在使われているすべてのCPUやメモリといった半導体素子はほぼ純粋なケイ素からできています.ケイ素を酸素にさらせばその部分は二酸化ケイ素となり絶縁体になりますし,極微量のリンや窒素等をドープすればその部分が金属並みに導電性を示します.こういった加工により回路を形成するためには,基板となるシリコンウェハ―から徹底的に不純物を除いておく必要があります(そうしないと,不純物によってどこもかしこも高い導電性のただの導体になってしまう).このため,半導体素子の作成に用いられるシリコンウェハ―は純度99.999999999(イレブンナイン,11N)以上に精製したものが利用されています.

半導体素子やガラス以外で,身近なところで使われているケイ素の化合物がシリコーンです.シリコーンというのは-Si-O-Si-O-という直鎖構造を中心にもつ分子で,各Si原子からはさらに2本の有機化合物が伸びています.どのような側鎖を付けるのか,どの程度枝分かれした構造にするか,どの程度の長さの分子にするか,という設計により特性を変えることが可能で,やわらかい固体のシリコーンゴムや,温度変化でも粘性のあまり変わらないシリコーンオイルなどとしてさまざまなところで利用されています.

元素一覧へ