この元素サンプルは，硫黄の単体をガラスに封入したものになります．硫黄は単体が自然に産出する元素のひとつで，非常に古くから存在が知られていた元素です．主に火山地域で単体が得られ，それ自体も良く燃える元素です．サンスクリット語の「火のもと」（sulvere）がラテン語でsulpurに変化し，現在のsulphur（またはsulfur）になったと言われています．
この元素サンプルは，硫黄の単体をガラスに封入したものになります．硫黄は単体が自然に産出する元素のひとつで，非常に古くから存在が知られていた元素です．主に火山地域で単体が得られ，それ自体も良く燃える元素です．サンスクリット語の「火のもと」（sulvere）がラテン語でsulpurに変化し，現在のsulphur（またはsulfur）になったと言われています．
硫黄は硫酸イオンなどの形で比較的広く分布している元素で，生物の主要元素のひとつです．日本などの火山国では，河口付近から吹き出す二酸化硫黄や硫化水素などとしても知られています．火山ガス中ではもともと二酸化硫黄などの形で含まれることが多いようですが，これが水と反応すると硫化水素と硫酸を生じることがあるため，地表付近に上がってきた火山ガスが地下水と反応して硫化水素が発生するようです．硫化水素と二酸化硫黄が出会うと反応して硫黄の単体を生じます．このため大涌谷をはじめとしたいくつもの温泉地で，単体の硫黄が析出している様子が観察できます．
現代では，原油の生成時に不純物として硫黄が多量に生成しており，その適切な利用や保管などが問題になることがあります．世界では硫黄が年間で数千万トン製造されています．硫黄は硫酸の原料やガムへの加硫など工業的な用途も多いものの，原油の精製などでの生産量も非常に多く，多量の硫黄が野積みされていることもあり環境への悪影響や事故が起こったこともあります．
硫黄の主な用途としては前述の硫酸やゴムに加え，CdSなどの受光素子や，NaS電池などに使われるほか，硫黄を燃やすことで生じる二酸化硫黄は古くから殺菌に用いられ，ワイン樽の除菌やフルーツ表面の殺菌などでもよく用いられてきました．また伝統的に皮膚疾患用の塗り薬にも配合されており，現代でも利用は続いています．特に，20世紀に入ってからは硫黄を含むさまざまな化合物が抗菌剤として開発され，プロントジルに始まる「サルファ剤」と呼ばれる一群の抗菌剤は大きな成果を上げました（※ドイツのドーマクが，「プロントジルの抗菌効果の発見」で1939年のノーベル生理学・医学賞を受賞）．サルファ剤は生物由来ではないため抗生物質とは呼ばれませんが，真菌類などの重要な代謝回路の一部を阻害することで働き，「人間にはほとんど害がないが，細菌類には大きな効果を発揮する薬剤」として抗生物質とよく似た効果を示します．