原子番号24 クロム

この元素サンプルは,クロムの単体である金属クロムです.元素として発見したのはフランスのヴォ―クランで,1797年の事でした.彼は翌1798年には酸化クロムと炭素を混ぜて加熱することでクロムを還元し,単体のクロムを得ることにも成功しています.クロムの名は,この元素が価数の違いによって多彩な色合いを示すことから「色」(Chroma)をもとにヴォ―クランが命名しました.

Element Cube_クロム

クロムは主に合金材料として使用されている元素です.「錆ない鉄」として使われるステンレスはクロムを10.5%以上含んでいる鉄合金で,空気中ではクロムが酸化されて生じる極薄の酸化膜(厚みはおよそ1〜3 nm)が合金の表面を覆ってしまうためそれ以上酸素が侵入せず,錆が進行しません(※もちろん,全く腐食しないわけではないので,条件によってはステンレスも錆びて劣化します).また鉄にモリブデンとともにクロムを少量添加した合金はクロムモリブデン鋼と呼ばれ,優れた強度を示すため講義やさまざまな機械の構造材としても良く用いられています.ただしクロムモリブデン鋼中のクロムの量はそんなに多くはないため,ステンレスのような耐食性は期待できません.

クロムはまた,美しい赤色で知られるルビーの着色原因でもあります.サファイヤ中のAl3+のごく一部(1%弱程度)をCr3+に置換すると,Cr3+が美しい赤色を示すようになります.ルビーは紫外線などで励起すると赤色光を放つ蛍光物質として知られており,世界初のレーザーはその発振媒体としてルビーロッドを使用していました.

金属クロムや3価のクロムイオンはほとんど毒性を持たないのですが,6価のクロム(いわゆる六価クロム)は非常に強力な酸化剤であり,発がん物質として知られています.このため,クロム酸(やそれと平衡状態にある二クロム酸)など6価のクロムを含む化学物質に関しては,処分も含め十分な注意が必要です.有機化学ではこの酸化力を利用したジョーンズ酸化などの反応が知られています.

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