この元素サンプルは,亜鉛の単体である金属亜鉛です.Zincという名前は,亜鉛の結晶が針状の尖った形状となることから,ドイツ語で尖った,とか,歯を意味するZinkenに由来するとも言われています.
この元素サンプルは,亜鉛の単体である金属亜鉛です.Zincという名前は,亜鉛の結晶が針状の尖った形状となることから,ドイツ語で尖った,とか,歯を意味するZinkenに由来するとも言われています.
亜鉛は銅との合金である真鍮としては紀元前1000年以前から使用されていたものの,単体の利用が広くなされるようになったたのはここ千年以内程度と比較的新しい金属です.古代ローマ時代にはある程度の純度の亜鉛(90%前後か?)を精錬する技術は一部に存在したようですが,さまざまに利用された真鍮とは異なり,単体の亜鉛が広く使われることはありませんでした.初めての亜鉛の量産は,12〜13世紀ごろのインドのあたりで始まったと考えられています.
亜鉛は比較的低い融点をもち,その柔らかさゆえにぶつかった際の衝撃を吸収できるなどの特徴をもっています.銅との合金である真鍮は美しい金色の輝きを示し,亜鉛が単離されるはるか以前から利用が進んでいます.真鍮は5円硬貨や南京錠,金管楽器(※金色の部分)などにも利用されていますが,これは真鍮の錆びにくさと切削加工の容易さなどの優れた特性によるものです.銅と亜鉛にさらにニッケルを加えた合金は洋白(ニッケルシルバー)などと呼ばれ,こちらも金管楽器(内管などの銀色の部分)や500円硬貨などに利用されています.
亜鉛のその他の用途としては,マンガン乾電池の負極や電解質に用いられたり,鋼材の腐食防止用の亜鉛メッキとしての使用が挙げられます.また,亜鉛合金はダイキャスト法による金属部品の製造にも使われています.
亜鉛は欠乏すると免疫の低下や成長不良,代謝異常などを引き起こしますが,亜鉛欠乏の初期症状としては味覚障害が知られています.特に高齢者ではキレート作用を有する医薬品の摂取により亜鉛の吸収が阻害され,欠乏症となることがよく見られるようです.