原子番号31 ガリウム

この元素サンプルは,ガリウム単体である金属ガリウムをガラスに封入したものです.ガリウムはボアボードランが1875年に分光により発見し,同年に単離にまでこぎつけました.Galliumという名は,彼の母国フランスの古名であるガリア(Gallia)にちなんで命名されています.

Element Cube_ガリウム

ガリウムはメンデレーエフが周期表を発表した際に「アルミニウムの下にあるべき,未発見の元素」として予言された元素で,1875年に実際に見つかった際には,その物理特性がメンデレーエフの予測とぴたりと一致したことでメンデレーエフの考え方の周期表が注目される決定打となった元素のひとつです.

ガリウムは融点がおよそ30 ℃と非常に低く,体温程度で溶けてしまう金属です.いくつかの他の金属との合金はさらに低い温度で融解することから,常温・常圧で液体の金属として熱媒体などへの利用がされることがあります.

ガリウムの化合物としては,近年のUSB電源でもよく使われているGaNがパワー半導体や青色発光ダイオードとして,GaAsが各種半導体素子として,GaPが緑色発光ダイオードとして,そしてGaSbが赤外線素子として利用されるなど,15族元素との組み合わせは非常に多くの領域で利用される重要な半導体材料となっています.

変わった例としては,プルトニウムとの合金が核兵器におけるプルトニウムの安定化のために用いられています.プルトニウムはそのままでは熱膨張が大きかったり温度による構造変化を起こすなどで体積変化が大きく,温度差により歪みを生じる恐れがあります.プルトニウムを用いた爆縮型の核兵器では設計通りの形状を維持し爆薬の衝撃波を中心に収束する必要があるため,こういった余計な体積変化を起こしにくいプルトニウム合金としてガリウムとの合金が用いられたそうです.

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