原子番号34 セレン

この元素サンプルは,セレンの単体である金属セレン(灰色セレン)をガラスに封入したものです.セレンはスウェーデンのベルセリウスとその助手のガーンにより発見・単離されました.Seleniumという名は月の女神セレーネ(Selene)にちなみますが,これはセレンの性質が周期表で一つ下に位置し先に見つかっていたテルル(地球を表すTellusにちなむ)に似ていたことから,地球に近いものということで月にちなんで名付けたとも言われています.

Element Cube_セレン

セレンの単体はいくつかの異なる構造をもち,灰色セレンはかなり導電性の高い半導体であることが知られています.セレンは硫黄などに混じって産出することが多く,セレンが主成分となっている鉱物はあまり多くはなく,その産出量もほとんどありません.このためセレンは他の物質の精錬の副産物として製造されています.特に銅鉱の精錬時の副産物として得られることから,銅の精錬を大規模に行っている日本はセレンの生産量が中国に次ぐ世界2位などになっています.

セレンは光が当たると伝導度が大きく向上する性質があり,コピー機のドラムなどに使用されています.またセレンの化合物は光学素子などに用いられることもあります.ガラスの着色材料としてセレン赤と呼ばれる物質が使われており,美しいピンク〜赤色のガラスを作ることができます.ただセレン赤は硫化カドミウムとセレン化カドミウムから作られており,その毒性に対する懸念から徐々に削減が進んできています.

セレンはまた,システイン(硫黄を含むアミノ酸)を合成する際に一定確率で硫黄の代わりに取り込まれ,セレノシステインとして一部のタンパク質の合成に使われています.このようにして作られたセレンを含むタンパク質であるセレノプロテインは独自の機能を持っており,多くの生物の生存に欠かせません.このためセレンは必須元素のひとつなのですが,とりすぎると毒となる元素でもあります.

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