原子番号35 臭素

この元素サンプルは,臭素の単体をガラスに封入したものです.臭素は1826年にバラールによって単離されました.この物質が強い刺激臭をもっていたことから,ギリシャ語の悪臭(Bromos)にちなみBromineと名付けられました.

Element Cube_臭素

単体の臭素は常温・常圧で液体の元素で,同じように常温常圧で液体の単体は水銀のみが知られています.常圧で液体といってもそこそこの蒸気圧を持つため,放置しておくとどんどん気化して周囲のものを腐食してしまいます.臭素は酸化力が強い=自身は非常に還元されやすいため,自然界では臭化物イオンBrの形で存在しています.資源として見ると海水中にほぼ無尽蔵と言っていい量が存在しているため,枯渇の恐れはありません.

炭化水素系化合物の水素をフッ素や塩素,臭素などで置換したハロン類としての利用が多かったのですが,オゾン層の破壊や温暖化係数の高さからハロン類の使用は減少してきており,臭素の用途も縮小しています.他の用途としては,一部の臭素化物のポリマーが難燃性素材として知られており,航空機や鉄道の内装などに利用されています.

有機化学分野においては,臭素はヨウ素とともに優秀な脱離基として知られており,有機物を臭素化する反応と,臭素を別な置換基に変換する反応がさまざまに開発されており,これらを組み合わせることで有機物にさまざまな置換基を導入することが可能となっています.

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