この元素サンプルは,クリプトンの単体をガラスに封入したものです.クリプトンは1898年にイギリスのラムゼーとトラバースによって液化空気の分留により単離されました(彼らは同様にネオンとキセノンも発見).空気中にはわずかにしか含まれていないため,クリプトンの分離にはかなり手を焼いたようで,隠れ(kryptos)ていてなかなか姿を現さなかったもの,ということでクリプトンと名付けられました.
この元素サンプルは,クリプトンの単体をガラスに封入したものです.クリプトンは1898年にイギリスのラムゼーとトラバースによって液化空気の分留により単離されました(彼らは同様にネオンとキセノンも発見).空気中にはわずかにしか含まれていないため,クリプトンの分離にはかなり手を焼いたようで,隠れ(kryptos)ていてなかなか姿を現さなかったもの,ということでクリプトンと名付けられました.
クリプトンは大気中に1 ppm程度と微量に含まれている元素です.貴ガス元素であるため反応性には乏しいのですが,ヘリウムやネオンなどに比べると最外殻が核からだいぶ遠くなっているため電子への引力が弱く,イオン化エネルギーは酸素原子と同程度となっています.このため非常に強い電子親和力を持つフッ素原子とは化合物を作ることが可能で,二フッ化クリプトンなどの化合物が知られています(※安定ではありませんが).
クリプトンの用途としては,まず電球の封入ガスが挙げられます.電球はフィラメントに通電することで高温にしその発光を利用しますが,より明るい電球とするためにはより高い温度を実現する必要があります.クリプトンは原子量が大きく重いので動きにくく,このため熱伝導性が悪い気体です.このため電球に封入するとフィラメントの温度が高くなり,より明るく輝きます(クリプトン球).また,貴ガスであるため反応性が低く,高温下でのフィラメントの反応も抑えられます.
熱伝導率の悪さを活かす用途としては,住宅用の断熱ガラスとしても使用されています.ご存じのように,窓ガラスはそこそこ熱を通すため住居の冷暖房費を上げる存在ですが,ガラスを多層構造にして間にクリプトンガスを封入しておくと,クリプトンの熱伝導性の悪さのため熱を通しにくいガラス窓が実現できます.北欧やカナダなど気温の低い地方では,クリプトンなどを封入した断熱ガラスが良く用いられているそうです.
他の貴ガス元素と同様,エキシマレーザーの発振媒体としても用いられることがあります.例えばクリプトンとフッ素ガスを混合したものをフラッシュランプで励起することで,波長248 nmのレーザー発振を行うことができます.エキシマレーザーはどのような元素を用いるのかによって発振波長が変えられますので,用途に合わせて各種のガスが使用されています.