この元素サンプルは,ルビジウムの単体である金属ルビジウムをガラスに封入したものです.ルビジウムは1861年にブンゼンとキルヒホッフが分光により発見され,苦労しつつも単離にも成功しました.この元素が炎色反応で示す光が紅色(rubidus)であったため,その色からルビジウムと名付けられています.
この元素サンプルは,ルビジウムの単体である金属ルビジウムをガラスに封入したものです.ルビジウムは1861年にブンゼンとキルヒホッフが分光により発見され,苦労しつつも単離にも成功しました.この元素が炎色反応で示す光が紅色(rubidus)であったため,その色からルビジウムと名付けられています.
ルビジウムは酸化されやすいアルカリ金属の,しかも周期表でそこそこ下に位置する元素です.一般的に,周期表で下に行くほど最外殻電子が原子核から遠いため核から受ける引力が小さく,電子が外れやすい=酸化されやすいことから,この元素はアルカリ金属のなかでもかなり反応性の高い元素となります.当然ながら自然界ではすべて+1価のイオンとして存在しています.
前述の通り反応性が高いため,単体は空気中でも自然発火することがあり,水に触れると瞬時に炎を上げて燃えがら飛び散ります.このため単体を使用することはほぼありませんが,数少ない例外が物理学における基礎実験です.物理の世界では,いくつかの分野の研究で「真空中にトラップした,とんでもなく低温の原子」を使うことがあります.この時よく用いられるのが,最外殻電子が少なく各種の実験で使いやすいアルカリ金属です.アルカリ金属を加熱し蒸発させ,気体となった原子をレーザーにより真空中にトラップ(&レーザー冷却),さらに磁場を用いた冷却などを組み合わせることで,1000万分の1ケルビン以下といった超低温の原子を用意することができます.ルビジウムはアルカリ金属のなかでも比較的蒸発しやすい原子ですので,こういった実験の標準試料としてよく用いられています.
ルビジウムの用途はそれほど多くはありませんが,例えば塩化ルビジウムなどが生命科学系の実験で用いられたり,炭酸ルビジウムなどが一部の光学ガラスや光ファイバーに添加されているそうです.また非常に正確に時を刻むための原子時計でも,一部でルビジウムを用いるものが存在します.