モリブデンの単体である金属モリブデンです.モリブデンは酸化物として1778年にシェーレにより発見され,その後1781年に友人のイェルムが炭素による還元で単体を得ることに成功しました.モリブデンの鉱物が鉛鉱物の方鉛鉱に似ていたことから,ドイツ語で鉛を意味するmolybdesからモリブデンと名付けられました.
モリブデンの単体である金属モリブデンです.モリブデンは酸化物として1778年にシェーレにより発見され,その後1781年に友人のイェルムが炭素による還元で単体を得ることに成功しました.モリブデンの鉱物が鉛鉱物の方鉛鉱に似ていたことから,ドイツ語で鉛を意味するmolybdesからモリブデンと名付けられました.
モリブデンは他のさまざまな遷移金属同様,鉄への添加剤としてよく用いられている.クロムモリブデン鋼やマンガンモリブデン鋼は溶接が容易であり,程よいしなりと強度を兼ね備えた鋼材として,自転車のフレーム材や管材などとして広く利用されています.また工具鋼としても多くの合金が利用されており,その優れた特性をいかんなく発揮しています.
工業用途としては,二硫化モリブデンが非オイル性の潤滑剤として知られています.二硫化モリブデンは層状化合物であり,重なった層が滑ってズレる方向に非常に低い摩擦係数を示します.このため,揮発性のない潤滑剤として,オイルミストを嫌うような用途で良く用いられています.またオイルと違いかなり高温まで分解せず安定なため,加熱が必要な装置などでの潤滑剤としても活躍しています.
生体内では,モリブデンは酸化還元がからむ反応で活躍しています.モリブデン補酵素(Moco)と呼ばれる分子は地球上の幅広い生物で保存されている金属補酵素で,さまざまな酸化還元を触媒する酵素の活性に必須となっています.モリブデンを含む酵素としては,大気中の窒素分子を還元する酵素であるニトロゲナーゼも有名です.ニトロゲナーゼはマメ科植物の根粒菌などが持っており,鉄-硫黄-モリブデンが結合した活性中心を持っています.窒素固定は生態系を支える重要な反応であり,その中心を担うニトロゲナーゼは自然界にとってなくてはならない酵素と言えるでしょう.