原子番号46 パラジウム

このサンプルは,パラジウムの単体である金属パラジウム箔をガラスに封入したものです.この元素は1803年にイギリスのウォラストンによって単離され,前年に新たに見つかった小惑星のパラス(※ギリシャ神話のトリトンの娘)にちなんで命名されました.

Element Cube_パラジウム

パラジウムは白金族元素のひとつですが,白金族のなかでは耐食性が最も低く,酸化力をもつ酸には溶解します.他の白金族同様プラチナ鉱石に含まれており,産出国はプラチナと同じく非常に偏っている金属です.

パラジウムの最大の用途は,ロジウム・プラチナとともに自動車用の三元触媒です.エンジン内の高温状態で副生してしまう一酸化炭素や窒素酸化物,断片化した炭化水素などの有害成分を分解するための触媒として,排ガスの浄化に利用されています.また白金族の多くの元素が触媒として利用されているのと同様に,パラジウムは有機化学における炭素-炭素結合の生成や,水素が関係するさまざまな反応での触媒となることが知られており,現代の化学を支える重要な元素でもあります.

身近なところでは,歯科用の充填剤として使われる金・銀・パラジウム・銅などからなる合金(通称「金パラ」)があります.削った歯の詰め物や,いわゆる銀歯として使われるかぶせ物はこの金パラでできており,かなりの貴金属を含んでいます.金パラは程よい柔らかさと強度を兼ね備えており,強い力のかかる奥歯などにも使用できますし,詰め物として作成する際の加工性も高い材料です.

パラジウムの面白い特性としては,水素を非常に多量に吸蔵できるというものが挙げられます.パラジウムは代表的な水素吸蔵金属であり,パラジウム中に最大限水素を吸着させると,液体水素以上の高密度で水素を貯蔵できることが知られています.とはいえ,パラジウム自体が非常に高価で,しかも重さもかなりあることから水素の保存法としてはほぼ使用できませんが…….この「水素を内部に溶け込ませられる」という特徴を使うと,パラジウム膜を「水素だけを通す膜」として利用することが可能です.この特性を活かし,各種のガスが混合したものから水素だけを回収する,などの用途にも使用されています.

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