原子番号48 カドミウム

このサンプルは,カドミウムの単体である金属カドミウムです.カドミウムは,菱亜鉛鉱中の不純物として1817年にドイツのシュトロマイヤーにより単離されました(同年に同国のヘルマンも独立に単離に成功).Cadmiumという名前の由来は,菱亜鉛鉱のギリシャ語名(Kadmeia)もしくはラテン語での別名(Cadmia)に由来するという説に加え,ギリシャ神話に登場するフェニキアの伝説上の人物カドムス(Cadmus)に由来するという説もあります.

Element Cube_カドミウム

カドミウムの単体は乾燥空気中では比較的酸化されにくい金属ですが,湿度の高い条件下では徐々に酸化されてしまいますし,酸にも溶解することができます.主に亜鉛鉱石中の不純物として含まれているため,亜鉛の精錬過程で除かれた残渣から生産されています.カドミウムは亜鉛に似ているため亜鉛と同じように体内に取り込まれやすく,しかもかなりの長期間排出されずに蓄積される傾向があります.多くのカドミウムを摂取してしまうと骨が極端に脆くなり,日本ではイタイイタイ病として社会問題化しました.また,腎臓や肺に対する毒性や発がん性もあるなど,利用にあたっては十分な注意を必要とする元素です.

カドミウムの用途ですが,古くは充電池(いわゆるニッカド電池)の電極材料や,自動車におけるカドミウムメッキ,硫化カドミウム(黄色)やセレン化カドミウム(赤色)などの顔料としてよく利用されていましたが,近年では有害物質への規制の強化に伴い使用はかなり減ってきています.例えば充電池で言えば,より毒性の低い材料を用いたニッケル水素電池やリチウムイオン電池への置き換えが進んでいるのはご存じの通りです.

他の用途としては,融点の低さから低融点ハンダやヒューズの成分として利用されることがあります.低融点合金としてよく知られたウッドメタルも,カドミウムを成分として含んでいます.また,中性子を良く吸収するため原子炉の制御棒の成分の一つでもあります.

カドミウムとカルコゲン元素との化合物は,半導体としても知られています.CdS,CdSe,CdTeなどが,発光材料,光センサー,放射線センサーなどの素子として利用されています.

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