このサンプルは,テルルの単体である金属テルルです.1782年にオーストリアのミュラーが発見しました.ミュラーの発見はマイナーな雑誌への報告であったため注目されませんでしたが,彼が未知金属を含むサンプルとして送った試料からクラプロートがテルルを単離し,地球(Tellus,ローマ神話の大地の女神の名でもある)にちなみテルル(Tellurium)と名付けました.
このサンプルは,テルルの単体である金属テルルです.1782年にオーストリアのミュラーが発見しました.ミュラーの発見はマイナーな雑誌への報告であったため注目されませんでしたが,彼が未知金属を含むサンプルとして送った試料からクラプロートがテルルを単離し,地球(Tellus,ローマ神話の大地の女神の名でもある)にちなみテルル(Tellurium)と名付けました.
テルルは結晶構造により金属であったり非金属であったりしますが,金属性の六方晶構造であってもそれほど電気伝導性は高くはなく,半金属と呼ばれることもあります.比較的還元されやすい元素であり,鉱石中には自然テルルとして析出することもありますが,金銀のテルル化物(例えばペッツ鉱Ag3AuTe2)やテルル化銅(Cu2Te),テルル化鉛(PbTe)など-2価の化合物として産出することが多い元素です.テルルの生産に関しては,銅鉱石中に微量に含まれるテルルを銅精錬の際の副産物(電解スライム)から分離することで行われています.ただ近年,銅の精錬は電解スライムを精製しない湿式精錬(SX-EW法)に移行しつつあり,テルルの生産は伸び悩んでいます.
テルルの大きな用途の一つは,自動車用などの鉄鋼への添加剤です.1%弱程度の微量のテルルを鉄鋼に添加すると,快削性や強靭性,耐食性などが改善することが知られており,自動車部品や精密機械部品への利用が行われています.またコピー機の感光ドラムにテルルとセレンの合金等が用いられてきました.コピー機ではドラム全体を帯電したあと,レーザーを当てた部分のみで電荷を発生させ,これが帯電を打ち消すことでトナーの付着を防ぎます(※レーザーの当たらなかった部分だけ帯電が残り,トナーが付着する).この光を受けて電荷を発生させる受光層にテルルやセレンが用いられていました.ただ,テルルやセレンは毒性を持つことから使用の削減が進み,現在では有機半導体などを用いたテルルフリーなドラムも増えてきています.
他の用途としては,カドミウムと組み合わせた化合物半導体CdTeが,安価でそこそこ効率の高い太陽電池として利用されています.テルルはあまり用途が無いため安く,一般的なSi系太陽電池よりも安く量産できる太陽電池として知られています.ただしカドミウム,テルルともに毒性を持つ物質ですので,きちんとしたリサイクルが必要となる点には注意が必要です.