このサンプルは,バリウムの単体である金属バリウムをガラスに封入したものです.この新元素の存在自体は1774年にシェーレが見出していましたが,単離は1808年のデービーの溶融塩電解が最初となります.バリウムBariumという名は,この元素を含む鉱石が高密度で重かったこと(ギリシャ語で重い=Barys)に由来します.
このサンプルは,バリウムの単体である金属バリウムをガラスに封入したものです.この新元素の存在自体は1774年にシェーレが見出していましたが,単離は1808年のデービーの溶融塩電解が最初となります.バリウムBariumという名は,この元素を含む鉱石が高密度で重かったこと(ギリシャ語で重い=Barys)に由来します.
バリウムの単体は銀白色の金属ですが,周期表の下側の元素(=電子を放出しやすい元素)であるため空気中では迅速に酸化し,その輝きは失われてしまいます.そのためバリウムは中性金属として利用するのではなく,そのほとんどの用途でバリウムイオンBa2+として含まれる形となります.
よく知られたバリウムの用途は,レントゲン撮影の際の硫酸バリウム(通称「バリウム」)でしょう.バリウムは電子を多く含む重元素ですからX線との相互作用が強く,レントゲン撮影では濃く映ります.このためバリウムを含む物質を飲み込んでおけば,胃の形状をくっきりと映し出すことができるわけです.本来Ba2+はかなり強い毒性があるのですが,硫酸バリウムはあまりにも溶解度が低く,しかも胃酸などとも反応しないため有害なBa2+が溶けだしてこないことから,こういった飲み込む用途に使用することができます.硫酸バリウム粉末は,その安定性と無色の粉末であることを活かして白色塗料などにも利用されています.
産業界におけるバリウムの最大の用途は,土壌掘削の際の加重剤です.ドリルで掘削しながら深部を砕き,破砕後の土砂を地上に戻すために,超重泥水を用いた掘削法が良く用いられますが,ここに硫酸バリウムを加えることでその比重を調整しています.特に近年ではシェールガス・オイルなどの開発も進んでいる伊ことから超重泥水を使うことが多く,バリウムの消費量も一気に拡大しました.
またバリウムは,高屈折率のガラスを作るための添加剤としても良く用いられますし,チタン酸バリウムは代表的な無機強誘電材料としてコンデンサをはじめ様々な素子に利用されています.電気繋がりで言うと,バリウムイオンは有名な超電導材料であるYBCO(イットリウム-バリウム-銅-酸素からなる超伝導体),つまり初の高温超伝導体の構成要素としても知られています.