原子番号57 ランタン

このサンプルは,ランタンの単体である金属ランタンをガラスに封入したものです.ランタンはスウェーデンのモサンデルにより1839年頃に分離されました.もととなった試料はベルセリウスやクラプロートが分離したセリア(※実際には複数の希土類元素の混合物)で,モサンデルはその中に別種の元素が混合していることを見出し分離,セリアの中に「隠れたもの」(ギリシャ語でLanthanein)ということで命名しました.単体金属は1923年頃に初めて精製されたようです.

Element Cube_ランタン

ランタンは銀白色の金属で,比較的延性や展性に富む物質です.ランタンそのものは比較的酸化されやすことからそのまま利用されることはほぼありませんが,酸化ランタンLa2O3はセラミックコンデンサの誘電材や光学用の高屈折率ガラスなどに用いられています.またLaNi5などの合金は水素をよく吸蔵できることが知られており,ニッケル水素電池などに用いられることがあります.

ランタンを選択的に使っている用途ではありませんが,ランタノイドを分離せずに混合物として含んだミッシュメタルというものがあり,ライターなどの添加用の火打石や,鉄鋼精錬時の脱酸素・脱硫剤などに広く用いられています.

変わったところでは,六ホウ化ランタンLaB6が非常に仕事関数(※金属から電子を引き出すのに必要なエネルギー)の小さな金属として知られており,電子顕微鏡や電子線露光装置などにおいて電子線を放出させるための電子源として用いられています.低い仕事関数のため非常に多くの電子が放出可能で,電子顕微鏡であれば輝度が高く対象物をはっきりと見ることを可能にし,電子線露光装置であれば多量の電子線により露光時間の短縮化(=スループットの増大)を実現しています.

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