原子番号63 ユウロピウム

このサンプルはユウロピウムの単体である金属ユウロピウムです.それまで単一の成分だと思われていたサマリア(サマリウムの酸化物を主とする物質)の中から,フランスのドマルセーが1896年に存在を見つけ,1901年に酸化ユウロピウムを単離しました.単体金属は1937年ごろに得られたようです.ユウロピウムの名は,ヨーロッパにちなんで名づけられました(さらにさかのぼると,ヨーロッパはギリシャ神話の女神エウロペに由来します).

Element Cube_ユウロピウム

ユウロピウムは銀白色の柔らかい輝きの金属ですが,非常に酸化されやすく,空気中では迅速に酸化されます.上の写真の試料も,オイル漬けで酸素に触れにくくしてあったもののかなり表面は酸化されてしまっています.

ユウロピウムの化学的性質は他の希土類元素とやや異なる部分があり,例えば地質学の分野では「ユウロピウム異常」という現象が知られています.これはマグマがゆっくり冷却されてできるときにEu2+が早期に沈殿して分離してしまい,花崗岩などに含まれるランタノイド元素のなかでユウロピウムだけが顕著に少ないという現象で,逆にマグマから早期に分離する斜長石などのなかには逆にユウロピウムが他のランタノイド元素より多く含まれるという現象です.

ユウロピウムイオンは非常に強い蛍光を示すイオンで,かつては酸化ユウロピウムなどがブラウン管や蛍光灯の蛍光体としてよく用いられてきました.また白色LEDでは,青色の光を吸収して黄色に変換する蛍光体としてユウロピウムの化合物がよく用いられています.また蛍光塗料として,ユーロ紙幣の偽造防止のための蛍光インク印刷などにも使用されています.

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