原子番号64 ガドリニウム

このサンプルはガドリニウムの単体である金属ガドリニウムです.ガドリニウムは1880年にスイスのマリニャックにより分光により発見され,その後フランスのボアボードランが単離に成功しました.ガドリニウムという元素名は,希土類元素の発見と研究に大きな功績を残したフィンランドのガドリンを称え命名されました.

Element Cube_ガドリニウム

ガドリニウムは銀白色の金属で,他のランタノイド同様,化学的に性質のよく似た各種希土類元素とともにまとまって産出します.希土類元素の例にもれず,ガドリニウムも単体で使われることはほとんどなく,セラミックや合金への微量添加による特性向上などで使用されています.

ガドリニウムイオンの用途の一つとして,MRIにおける造影剤が挙げられます.MRIでは磁場による水素原子核のスピン偏極を利用して「体の中のどの部分に水素原子(※体内の場合,その多くは水)が存在するか?」を検出することで,体内の様子を観察しています.ここに小さな磁石とでも言えるようなガドリニウム錯体を加えることで,高コントラストの画像を撮影できる,という手法があります.これを活用し,組織の特定の場所に集まりやすいよう化学修飾したガドリニウム錯体を注入すると,特定組織や患部などをくっきりと浮かび上がらせたMRI画像をとることが可能になり,診断の精度が高まります.

ガドリニウムはほかにも,蛍光材料として特定用途のガラスに添加されたり,磁性材料の高機能化のために少量使われるなど,以外に産業用途での利用が拡大している元素です.また,変わった用途としては,ガドリニウムが非常に高い中性子吸収能をもつことを利用して,原子炉における連鎖反応の制御剤としたり,スーパーカミオカンデで溶液にガドリニウムを溶かすことで中性子の検出率を上げるなどの用途でも利用されています.

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