原子番号68 エルビウム

このサンプルはエルビウムの単体である金属エルビウムです.この元素はスウェーデンの化学者モサンデルが1843年頃に発見し,その後1934年にポーランドのクレムとボマーが単離に成功したと言われています.エルビウムの名は,この元素のもととなった鉱物の産出地イッテルビーに由来します(イッテルビーという地名からは,イットリウム,テルビウム,エルビウムの3つの元素名が生まれています).

Element Cube_エルビウム

エルビウムは銀白色の金属元素ですが,他のランタノイド元素同様,単体がそのまま利用されることはほぼありません.エルビウムは+3価のイオンになりやすいのですが,このイオンは美しいピンク色をしており,ガラスに微量添加することでの着色にも利用されています.

エルビウムの重要な用途の一つが,光学材料です.エルビウムは波長980,または1480 nmで励起すると1530 nmの光を放出する特性があります.1530 nmというのはちょうど光ファイバーでの通信に適した(=ファイバーによる吸収の少ない)波長であることから,そういった光通信信号の増幅用としてエルビウムを添加した光ファイバーが用いられています.こういったファイバーを980 nmの光などで励起しておくと,1530 nm付近の信号光が来た時だけエルビウムイオンからの誘導放出が起こり,信号を増幅させることが可能となります.

エルビウムを添加したYAGレーザーは,また別の2940 nmの光を放出するレーザーとして利用できます.この波長域のレーザーは水に非常に強く吸収されるため,光の当たったところの浅い部分のみを選択的に加熱できるということで,歯科用など医療用レーザーとしてよく利用されています.

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