このサンプルはツリウムの単体である金属ツリウムです.この元素はスウェーデンの化学者クレーベが1879年に存在を見出しましたが,その存在量が非常にわずかであったため,そこそこ純度の高い単体金属の単離は1911年のイギリスのジェームスによる仕事まで実現しませんでした.ツリウムという名は,(他の多くのランタノイドと同じく)この元素のもととなった鉱石が発見されたスカンジナビア半島にちなみ,スカンジナビアやアイスランドなどの北部一帯を指す古語の地名であるトゥーレに由来します.
このサンプルはツリウムの単体である金属ツリウムです.この元素はスウェーデンの化学者クレーベが1879年に存在を見出しましたが,その存在量が非常にわずかであったため,そこそこ純度の高い単体金属の単離は1911年のイギリスのジェームスによる仕事まで実現しませんでした.ツリウムという名は,(他の多くのランタノイドと同じく)この元素のもととなった鉱石が発見されたスカンジナビア半島にちなみ,スカンジナビアやアイスランドなどの北部一帯を指す古語の地名であるトゥーレに由来します.
ツリウムはやや黒みがかった銀灰色の金属で,ランタノイドのなかでも(放射性でほとんど自然界には存在しない)プロメチウムに次いで存在量の少ない元素です.大量に得ることは困難で,それゆえ産業的な用途もそれほど多くはありません.
ツリウムの産業における用途の一つは,光ファイバーです.周期表でひとつ前の元素であるエルビウムと同様に,ツリウムをドープした光ファイバーは(エルビウムとはまた異なる)特定波長の光を増幅することが可能で,光ファイバーによる長距離伝送に役立てられています.また,ツリウムをドープしたYAGレーザーは2000 nmあたりの発振波長となり,水分子に良く吸収されるレーザーとなります.このため医療用で用いると,組織の非常に浅い部分のみに強く吸収されるため,余計な部分にダメージを与えず,照射したその部分のみを焼き切ることができます.
エルビウムを添加したYAGレーザーは,また別の2940 nmの光を放出するレーザーとして利用できます.この波長域のレーザーは水に非常に強く吸収されるため,光の当たったところの浅い部分のみを選択的に加熱できるということで,歯科用など医療用レーザーとしてよく利用されています.
天然の169Tmに原子炉などからの中性子を照射すると,放射性の170Tmを作ることができます.この170Tmはおよそ129日の半減期をもつ放射性元素で,99.87%の確率でβ崩壊して170Yに変化し,生じた170Yの一部は余剰エネルギーをX線として放出します.このため170Tmは小型のX線源として使用することができ,橋やビルの壁の内部などの深部検査や,持ち運んでの医療用のX線撮影に用いられています.