原子番号72 ハフニウム

このサンプルはハフニウムの単体である金属ハフニウムの線材です.ハフニウムは1923年にオランダのコスターとハンガリーのヘヴェシーにより発見されました.単離はその2年後の1925といわれています.この研究はニールス・ボーアの指示のもとコペンハーゲンのニールス・ボーア研究所にて行われており,コペンハーゲンの古名であるHafniaにちなみハフニウムと命名されました.

Element Cube_ハフニウム

ハフニウムはかなり存在量の多い元素であり,地殻中の存在量はスズなどより多いとされています.これほど多く存在する元素ではあったものの化学的な性質がジルコニウムと非常によく似ており,両者がしばしば混合物として利用されていたことから,ハフニウムの発見は遅れました.ジルコニウム自体は1800年代から利用が進められていた金属であるため,その中に何か別な元素が混入していそうだ,ということに気づいた化学者は何人もいたと考えられていますが,ハフニウムを分離することが難しく,その存在の確立まで時間がかかったようです.

当初は,ハフニウムにはほとんど用途がありませんでした.中性子を非常によく吸収することから,原子炉における制御棒として利用されています.逆に,原子炉の燃料棒などに用いられるジルコニウムには,不純物としてハフニウムが混ざらないよう,その含有量に厳しい制限がつけられています(※化学的によく似ているので混ざりやすく,混ざってしまうと中性子を吸収してしまい燃料としての効率が落ちるため).

そんなあまり用途が無い金属であったハフニウムですが,2000年代にはいると風向きが大きく変わります.当時,CPUなどの微細化に伴い優れた絶縁性と誘電性を兼ね備えた酸化物の探索が積極的に行われた結果,ハフニウムの酸化物が非常に優れた材料として浮かび上がってきたのです.現在では,メモリやCPUなどの半導体素子における高誘電(High-κ)材料として,ハフニウムは必要不可欠な素材となっています.

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