原子番号76 オスミウム

このサンプルはオスミウムの単体である金属オスミウムの粒です.オスミウムは1803年にイギリスのテナントとウォラストンにより,粗白金を溶解した残渣から発見されました.オスミウムOsmiumという名は,この過程で生じたOsO4が煙のような独特の臭いを発していたことから,ギリシャ語の臭い(Osme)から名付けられました.

Element Cube_オスミウム

オスミウムはやや青みがかった濃い色合いの金属で,白金族元素と呼ばれる6種の金属(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt)の一つです.白金を超える密度の非常に重い金属で,単体は硬いものの脆いため強い力が加わると砕けやすい傾向があります.地殻中での存在率は非常に低く,安定各種のなかでは最も少ない量しか存在していません.このため,世界でのオスミウムの生産量は年間で1トン前後と見られています.

オスミウムは酸化物の蒸気圧が高いとともに有毒なので,単体での使用には向いていません(生産量も少ないですし).一般的には他の金属との合金にすることでその硬度を増すなどの用途で使用されています.

化学の分野では,四酸化オスミウムやその還元体が優れた酸化剤として知られており,例えばアルケンのジオール化などを温和な条件で行うことができ,さらにキニーネ誘導体を用いることでの不斉ジオール化(シャープレス不斉ジヒドロキシ化)などにも活用されています.

生命科学分野でもオスミウムを利用することがあります.生体試料を四酸化オスミウムなどで処理すると,分子中の二重結合を切断し,その部位にオスミウムが結合します.オスミウムは原子番号が大きく電子顕微鏡で非常に濃く映し出されるため,生体組織などをくっきりと観察することが可能となります.

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