このサンプルは金の単体である金箔です.金は非常に古くから人類に利用されてきた元素であり,人類がいつ見つけたのか確かなことはわかりません.英語のGoldやラテン語のAurumはいずれも「輝く」などの意味の語(Ghel,Aurum)に由来すると言われています.
このサンプルは金の単体である金箔です.金は非常に古くから人類に利用されてきた元素であり,人類がいつ見つけたのか確かなことはわかりません.英語のGoldやラテン語のAurumはいずれも「輝く」などの意味の語(Ghel,Aurum)に由来すると言われています.
金は非常に酸化されにくい元素であり,単体金属がそのまま析出する数少ない元素のひとつです.金自体がそのまま得られ精錬の必要が無い事,美しい金色の輝きを持つことなどから,金は古くから装飾品や貨幣として利用されてきました.装飾品として用いる場合には,金100%では柔らかすぎるため,さまざまな金属との合金にして利用されます.この時,組み合わせる金属により色合いが変わり,銅などを加えると赤みがかったピンクゴールド(※銅が多いとレッドゴールド)に,銀を加えるとうっすらと緑がかったグリーンゴールドに,ニッケルやパラジウムなどを加えるとうっすらと黄色がかったホワイトゴールド(※多くの場合,貴金属製品のホワイトゴールドはロジウムメッキなどにより純白の色合いに仕上げられますが,ホワイトゴールド自体は柔らかな金色です)と,さまざまな色合いの金合金が利用されています.金の示す美しい色合いには,量子力学と相対性理論が関わっています.原子の性質はそのほとんどが電子によって決まりますが,非常に軽い粒子である電子の運動を正しく記述するには量子力学が必要です.特に金のような重原子では原子核の正電荷が大きくなり,このため原子核付近での電子の速度は光速に近づき,相対論的な効果を受け始めます.この効果をきちんと取り込んで計算することで,金の美しい色合いをはじめて説明することが可能になるそうです.
金はまた,工業的にも重要な元素です.金は非常にやわらかく加工が容易で,しかも電気をよく流すことから,電気的な接点に金メッキや金線による配線が利用されています.接点を金で作ると錆びないため劣化が少なく,しかも差し込んだ際に柔らかな金がわずかに変形することでしっかりとした電気的な接触を実現することができます.
かつては金はほとんど化学反応を起こさないと考えられていましたが,金をナノ粒子化して金属酸化物などに担持すると,一部の化学反応に対し良い触媒となることが示されています.また金のナノ粒子は表面プラズモンにより非常に強い光吸収を示し,ガラスに金のナノ粒子を混在させたものは鮮やかな赤色となります.これは例えばステンドグラスやベネチアングラスでも用いられてきました.
金はまた,蒸着の容易さから何かの表面に金属薄膜を作りたいという場合にもよく用いられています.例えば走査電顕である程度のサイズのある非導電性のものを見たい場合などは,試料の表面に金を薄く蒸着することで帯電を防ぎ,細かな構造をくっきりと観察することが可能となります.