原子番号81 タリウム

このサンプルはタリウムの単体である金属タリウムをガラスに封入したものです.タリウムはイギリスの化学者/物理学者クルックスにより1861年に発見され,翌1862年にクルックスとフランスのラミーにより単離されました.タリウム(Thallium)という名は,この元素の示す緑の発光にちなみ,ギリシャ語の緑の小枝(Thallos)から命名されました.

Element Cube_タリウム

タリウムは銀灰色の鉛に似た見た目の金属ですが,酸素や水の存在によりかなり急速に酸化されてしまいます.タリウムはクルックスにより発見しますが,その発見は偶然によるものでした.当時クルックスはセレン化物の研究を行おうとしており,知人の化学者であるホフマンが事業として行っていた硫酸の製造に伴い得られるセレンを多く含む廃棄物を譲り受けました.この廃棄物を精製しセレンを取り除いた残り滓を分析したところ,未知の元素に由来するスペクトルを発見し,タリウムを見出すことになります.

タリウムはかなりの毒性をもち,それを活かしてかつては殺鼠剤に用いられていました.ところが子供による誤飲・中毒が何件も起こったことからWHOにより使用停止の勧告が1973年に行われ,現在ではこの用途での利用は無くなっています.

タリウムの用途自体は多くありませんが,その中でも有名なものは高屈折率の光学用ガラス向けの材料です.また,硫酸タリウムなどを少量添加したヨウ化ナトリウム結晶が赤外線センサーとして用いられることもあるようです.また変わった用途としては,水銀とタリウムの合金が-60 ℃という非常に低い融点をもつ液体金属となるため,極地などの低温地帯におけるスイッチなどに利用されたりすることがありますが,やはり毒性が問題となりあまり大きな用途とはなっていません.

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