鉛の単体である金属鉛です.鉛は非常に古くから知られた金属であり,その名の由来はよくわかっていません.元素記号のPbはラテン語で鉛を意味するPlumbum Nigrum(黒いPlumbum)に基づきます(※Plumbumは低融点金属を指し,例えば白いPlumbumという意味のPlumbum CandidumもしくはPlumbum Albumはスズを指します).
鉛の単体である金属鉛です.鉛は非常に古くから知られた金属であり,その名の由来はよくわかっていません.元素記号のPbはラテン語で鉛を意味するPlumbum Nigrum(黒いPlumbum)に基づきます(※Plumbumは低融点金属を指し,例えば白いPlumbumという意味のPlumbum CandidumもしくはPlumbum Albumはスズを指します).
鉛は紀元前6500年頃には利用が始まっていたことが分かっており,銀と同じぐらいに古くから人類に利用されてきた金属です.鉛の多くは硫化物である方鉛鉱に含まれていますが,方鉛鉱は多くの場合少量の銀を含んでおり,古代において銀と鉛の採掘は相関がありました.鉛は酸化されやすい金属ですが表面が酸化膜で覆われると内部までは酸化が進みにくく,比較的安定に長期間使用できます.このことと,金属自体が柔らかく加工性に優れていることから,例えば古代ローマでは水道管などを鉛で作成したり,羊皮紙に文字を書くのに利用したりしていました.
現代における用途の最大のものは,自動車やバイクなどのバッテリー(鉛蓄電池)です.硫酸と鉛からなる鉛蓄電池は安価でしかも充放電による劣化が少ないことから,常に充放電が繰り返される自動車などのバッテリーに適しています.また鉛蓄電池は構造が単純であるため,廃棄後のリサイクルも容易で流通経路が確立されています.その一方で鉛蓄電池は重く,またリチウムイオン電池に比べるとエネルギー密度が低くなってしまうため,電気自動車などの電源としては不向きです.
鉛の別な大きな用途が,クリスタルガラスです.通常のガラスはSiO2を主成分としていますが,ここに酸化鉛PbOを多く加えると密度が上がり屈折率が増します.また熱による軟化も低めの温度で起こるため加工性が良く,装飾品やインテリア,グラスなどにもよく用いられています(※ソーダガラスも軟化点は低いが,色がついてしまい完全な無色透明にはならない).また鉛は重元素であることからガンマ線などの吸収率も高く,放射線防護にも鉛板や鉛ガラスは良く用いられています.
このほかにも,その重さと加工の容易さから釣りの重りなどにもよく使われたり,融点の低さを活かしてハンダなどに広く使われてきた鉛ですが,毒性があることから最近では使用の削減が進んでいます.例えば重りとしてはタングステンを使用したり,ハンダではスズ-銀合金などを主体として無鉛ハンダの使用が大きく伸びるなど,鉛の使用をいかに削減するかがさまざまな分野で検討されています.