原子番号83 ビスマス

このサンプルはビスマスの単体である金属ビスマスの骸晶です.ビスマスは(非常に稀ですが)単体でも産出する元素であり,15世紀には単体金属がすでに知られていたようです.語源に関してははっきりしたことはわかっていませんが,一説には「白い物質」を指す語が転化したとも言われています.

Element Cube_ビスマス

ビスマスは稀にとはいえ単体が産出することもある元素で,比較的還元しやすい金属です,そのためかなり古くから利用は行われていたと思われるのですが,近世に入るまでアンチモン,スズ,亜鉛,鉛などと混同されており,これらと異なる元素だということは認識されていなかったようです.

ビスマスは融点がおよそ270 ℃ほどとかなり低融点の金属であり,バーナーなどによる加熱で容易に溶解させることができます.素焼きのるつぼなどに入れバーナーで溶かし,少し冷えたところで析出し始めた結晶を摘まみだすと,結晶が成長途中で辺の部分が完成し,面の部分が削れている「骸晶」と呼ばれる形状の結晶を取り出すことができます(上の写真の試料もそれです).ビスマス自体は酸化しにくい金属ですが,溶融の際の熱により表面が酸化し薄い酸化膜で覆われ,これが光の干渉により虹色に色づいて見えます.比較的簡単な器具で美しい七色の骸晶を作れることから,ビスマスの再結晶は自宅でできる実験のなかでも人気のテーマの一つです(※やけどには十分な注意が必要ですが……).

ビスマスはその低融点を活かし,鉛フリーハンダやウッド合金などの低融点合金として用いられています.低融点を活かした用途としてはスプリンクラーも挙げられます.水道管の先をビスマスで閉じておくという仕組みで,火災の際の熱でビスマスが溶けると,自動的に水道の水圧で水が散布されます.これは停電時でも確実に水を散布できる優れた方式です.

他の用途としては,熱電変換素子が挙げられます.テルル化ビスマスは優れた熱電変換素子として知られており,温度差を電流に変換することが可能です.またオキシ塩化ビスマスという化合物は鱗片状の細かい結晶として得られ,これを練りこんだペーストにパール的な輝きをもたらすため,化粧品に加えられることがあります.

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