原子番号113,ニホニウムのアクリルダミーです.この元素は日本の理研が2004年〜2012年の実験で3個の原子の合成に成功し,既存の崩壊系列への崩壊まで確認できたことから2015年に命名権を獲得し,日本にちなみニホニウムと名付けられました.
原子番号113,ニホニウムのアクリルダミーです.この元素は日本の理研が2004年〜2012年の実験で3個の原子の合成に成功し,既存の崩壊系列への崩壊まで確認できたことから2015年に命名権を獲得し,日本にちなみニホニウムと名付けられました.
113番元素の発見を最初に報告したのはロシアのドゥブナとアメリカのローレンス・リバモアの合同チームで,彼らは2003年に115番元素を合成し,それがα崩壊して113番元素になったことを報告したものの,既存の崩壊系列まで追跡することができず,この時点では新元素の合成と正式には認められませんでした.一方,日本の理研のグループは2004年に,加速した70Znを209Biに衝突させることで113番元素の合成に成功したと報告.80日間にわたって加速した亜鉛を照射し,113番元素1個を合成したとみられています.この時合成された原子は344 μ秒でα崩壊し,111番元素の274Rg(と思われる原子)に崩壊,その後もα崩壊を続け,109番元素の270Mt,107番元素の266Bh,105番元素の262Dbと思われるところまでの崩壊を追跡しました(※これらの元素名・元素記号が決定したのは実験よりだいぶ後年になってからですが,ここではわかりやすさのため現代の表記法で記載しています).しかし262Db(と思われる原子)からの崩壊をうまく追えず,この段階では発見は確定していません.理研はここで方針を転換し,107番元素の266Bhから105番元素の262Dbへの崩壊と,その後の崩壊様式を確定する研究を並行して実施,266Bh → 262Dbの際に放出されるエネルギーなどが以前の278Nhが崩壊してできた266Bh(と思われる原子)の崩壊の際と一致することを示し,以前の実験で合成された原子が278Nhであることを確定させました.さらに2012年には,3個目の278Nhの合成にも成功,今度は崩壊の結果生成した262Dbがさらに103番元素の258Lr,そして101番元素の254Mdへと崩壊し既知の崩壊と一致するところまで追跡できたため,278Nhの発見を確定させることができました.
2015年にIUPACは,理研が278Nhを3原子合成できたこと,その崩壊系列を慎重に追跡し既知の系列に繋がるまできちんと追えたため合成した原子の原子番号と質量数が確定できたことなどから,理研を元素の発見者と認定し,命名権を与えました.理研のグループは2016年にニホニウムの名称を提案し承認され,日本のグループが命名した初めての元素となりました.