DBrEDTで強い相互作用が現れ,さらに同じ研究室の人間であった 岡部の作った結晶(EDTDM)2FeBr4でも同様の強い相互作用が生じていた 事[1]を踏まえ,EDTDMのメチル基の片方をBrにすれば,距離が近くなることでさらに相互作用が 強くなるのではないか,と考えて作ったのが片方のみBrに置換したドナーBrMEDTです. そんなわけで論文になるでもなく没になったわけですが,せっかくですのでここでちょっとだけ 紹介させていただきます. 構造はEDTDM塩と同じくダブルカラム(二つの異なる方向を向いたドナー層からなる)で, その間に磁性アニオン層が挟まった構造です. それぞれのレイヤーを横から見るとこんな感じに. 磁性はこんな感じで,およそ3 Kあたりで反強磁性に転移します. 低温では絶縁化しますが,そこそこ電気は流します.反強磁性転移以下では,低温で大きな 負の磁気抵抗を示します.ここで加圧とともに抵抗の変化率は大きくなり,系があまりにも 金属状態に近くなると磁気抵抗効果はほとんど見られなくなっていきます. これは金属-絶縁体転移の近傍であるほど,磁性アニオンの作る実効的な内部磁場によって 絶縁相の安定化される度合いが大きい(磁性アニオンに誘起されドナーの電子がスピン分極, 自分自身の作る磁場でさらにエンハンス,というような機構と思われる.あまりに絶縁相寄り ではすでに十分なスピンが立っていて,十分金属相ではスピンが誘起されない)ためだと 思われます. そのあたりも含めて,本当にEDTDM塩と同じなんですよね…….残念なことに. |